小峰書店HPより表紙画像をお借りしました。
あかいてぶくろ
作 林木林
絵 岡田千晶
発行 2021年10月
出版 小峰書店
ページ数 32P
おすすめの年代 4歳〜小学校低学年
あらすじ
ちびちゃんの赤い手袋は右と左いつも一緒に出かけます。右と左の手袋は仲良しです。
ところがある日、ちびちゃんは右の手袋を落として無くしてしまいます。仕方なく、ちびちゃんは新しく右の手袋を編んでもらいました。
落とされた右の手袋はうさぎのお母さんに拾われ、子うさぎの双子の帽子として使われます。
その後、右の手袋はうさぎの家に遊びに来たのねずみの三兄弟に譲られることになり、のねずみの三兄弟の寝袋になりました。
ところが、のねずみの兄弟が手袋の取り合いをしたせいで、手袋は遠くへ飛んでいってしまいます。
そして、今度はりすに拾われました。手袋はほつれて穴だらけになっていましたが、リスのセーターとして使うのにぴったりでした。
今もちびちゃんに使われている左の手袋は、あのときの右の手袋はどうしているだろうと考えていました。ある日、左の手袋は木の枝にあの右の手袋が引っかかっているのを見つけました。左の手袋も、右の手袋に気が付きました。その時、リスが出てきて右の手袋を大事そうに胸に抱き寄せました。
右の手袋と左の手袋は、どちらも今同じように幸せでした。
おすすめポイント
細かい編み目が描かれ、ふんわりした質感まで感じられる赤い手袋の表紙が目を惹きます。イラストが非常に繊細で美しく、すぐ目の前に銀世界が広がっているような錯覚に陥るほどです。また、ちびちゃんや動物の表情が優しく、眺めているだけで心が温まります。
物語は、手袋の視点から始まります。「ちいさなてがつめたくないように、あしたもふわふわでいてあげようね。」と約束する仲良しの手袋たち。その後、落とされた左の手袋の行方が描かれますが、客観的に状況が説明されていて、手袋の感情については触れられません。最後に再び、手袋の視点に戻り「みぎのてぶくろとひだりのてぶくろ。どちらもいま、おなじようにしあわせでした。」と締められています。
いろいろな動物の手に渡り、ボロボロになっていく手袋の感情にあえて触れず、「手袋の幸せな感情」のみに言及することで読み手を温かい気持ちにさせてくれると同時に、自分の持ち物との向き合い方を考えるきっかけを与えてくれます。
描かれたイラストも、紡がれた言葉も、一つ一つが丁寧で美しく、読み終わった後にじんわり心が温まる絵本です。
コメント