世界文化社HPより表紙画像をお借りしました。
ポコタのきのみ
作 しもかわらゆみ
発行 2023年10月
出版 世界文化社
ページ数 24P
おすすめの年代 4歳〜小学校低学年
あらすじ
主人公は食いしん坊なたぬきのポコタです。冬が近づき、この頃食べても食べてもお腹が空きます。
秋の森はごちそうでいっぱいです。ポコタがヤマブドウを頬張っていると、りすがクルミを土に埋めていました。少し離れたところでねずみもドングリを埋めています。
ポコタが不思議に思って何をしているのか尋ねると、りすは「ふゆのためにうめておくんだ。ゆきがふってきのみがなくなったら、ほってたべるんだよ」と答えます。よく見ると、ヤマガラやカケス、ホシガラスもきのみをあちこちに埋めていました。
ポコタはワクワクして、自分もやってみようと、木の実をあちこちにどんどん埋めました。ところが急にハッとして「どうやってきのみをさがすの?どこにうめたかどうしてわかるの?」と尋ねます。りすとねずみは「うめたばしょはほとんどわすれたりしないよ。」「100こでも1000こでもしぜんとおぼえているんだよ」と言います。
ポコタはぽかんとしました。「ぼく…おぼえていない!」そして、「ぼく、だめだなぁ」としょんぼりします。
りすとねずみは言います。「ちっともだめじゃないよ。だってポコタはふゆになるまえにうんとたくさんくだものやきのみをたべることができるじゃない!」「いっぱいたべるなんてぼくたちにはできない。だからきのみをうめるんだよ」どっちもすごいやり方なんだと二人はニコニコ話します。ポコタは食いしん坊がすごいなんて考えたことはなかったけれど、それを聞いて嬉しい気持ちになりました。
やがて冬になり森は雪で真っ白になりました。ポコタはたくさん食べてコロンコロン。ちっとも寒くありません。雪の中を歩きながら、僕の木の実は雪が溶けたら小さな芽を出して、いつか大きな木になって、きのみがたくさんなるのかな…と考えます。そして、春になったらりすくんやねずみくんと木の実を埋めた場所を見に行こうと決めました。
おすすめポイント
森で暮らす動物同士がお話しをするファンタジックな物語ですが、イラストは非常にリアルで、動物たちの毛並みまで丁寧に描き込まれています。紅葉が美しく色づいている森の景色は、落ち葉を踏み鳴らす音が聞こえてきそうなほど、また、雪に埋まった冬の森はひんやりとした空気感が伝わるほどに臨場感があります。
ポコタは他の動物たちが行っている木の実を埋めるという冬越しの方法が、彼らの特別な記憶力の元成り立っていることを知ります。「ぼく、だめだなぁ」というポコタに、りすとねずみは、冬の前にたくさん食べるのも、木の実を埋めるのも、どちらもすごい方法なのだと諭します。自分では取るに足らない能力だと思っていたことが、客観的に見ると素晴らしい長所であるということもあり得る、各々が自分の持っている個性に自信を持って良いのだ、という子どもたちへの温かいメッセージが含まれた物語です。
登場人物全員が素直で思いやりのあるキャラクターであるところも魅力的で、読んだ後に優しく前向きな気持ちになれる、心温まる絵本です。
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