岩崎書店HPより表紙画像をお借りしました。
ゆきのようせい
作 松田奈那子
発行 2021年10月
出版 岩崎書店
ページ数 32P
おすすめの年代 3歳〜小学校低学年
あらすじ
森中が冷たい空気に包まれた朝、土の中で1匹の雪虫が目を覚ましました。雪虫は、生き物たちに冬の訪れを知らせにいく虫です。
仲間たちは地上に続くトンネルをくぐって次々と飛び立っていき、その雪虫も追いかけて羽を広げましたが…思うように飛べず、仲間たちは先に行ってしまいました。
雪虫は虫たちに飛び方を聞いて回ります。蝶々のアドバイスでようやく飛べるようになり、いろいろな動物に冬の訪れを知らせにいきました。でも、すでに仲間の雪虫から知らせを受けた動物ばかりで、自分の知らせはいらないのかも、とすっかり落ち込んでしまいました。
そのとき、1人の子どもが雪虫を見つけ、「冬が来るのを教えてくれる妖精さん」だと友達に教えます。そのとき、雪が降ってきました。子どもたちに「おしらせありがとう」と言われ、雪虫は嬉しい気持ちでいっぱいになりました。
森にも湖にも雪が降り、役割を果たした雪虫は木の幹の穴の中へ潜り込んでいきました。
おすすめポイント
このお話の主人公になっている雪虫について、最終ページで監修者の石黒誠さんが大人向けの解説を書いています。雪虫は北海道から東北地方で見られる虫で、正式名称はトドノネオオワタムシです。白くてゆっくりふわりと雪が舞うように飛ぶので雪虫と呼ばれるようになりました。雪が降り始める前の、秋の終わりに現れるため、「冬を告げる虫」とも言われています。
「ゆきのようせい」というタイトルから、架空の生き物の物語と捉えるお子さんもいるかもしれません。雪虫が実在すること、もし理解できる年齢であれば、後書きに書かれた雪虫に関する知識も併せて話題にすると、より物語が身近なものに感じられそうです。
親しみやすく愛らしい雪虫のイラストとは対照的に、伸びやかに美しく描かれた景色もこの絵本の見どころで、物語を通して季節の移ろいを楽しむことができます。
誰かの役に立ちたいと強く願う雪虫の健気な姿に心が温まる、寒い季節にお薦めの一冊です。
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