佼正出版社HPより表紙画像をお借りしました。
おもちのかみさま
作 かとうまふみ
発行 2017年12月
出版 佼成出版社
ページ数 32P
おすすめの年代 4歳〜小学校低学年
あらすじ
昔々、お百姓の娘が台所でお餅を見つけます。娘が食べたいと言うので、お母さんは一体いつのお餅だろうか…と思いつつ焼いてみます。ところがお餅はちっとも膨らみません。娘が待ちきれず食べてみると…がきっ!…硬すぎて食べられません。お母さんはお餅を捨ててしまいます。
捨てられたお餅はひょいっと立ち上がり喋ります。
「ふん!わたしも、はじめはやわらかいおもちだった。ながいながいじかんが、わたしのみもこころもかたくしたのだ」お餅は誰にも食べられまいと、堅く心に決め旅に出ました。
お餅が歩いていくと旅人に出会いました。旅人は焼いて食べようとしますが、お餅は「ふん。わたしはとくべつなおもちだ。たべられるなんて、まっぴらごめん!」と言います。旅人は焚き火で焼けばすぐ食べられると思い、箸で焚き火に近づけますが、ちっとも膨らみません。旅人は諦めてお餅を捨てました。
お餅がどんどん歩いていくと、立派なお屋敷の奥さんに出会います。奥さんは立派な窯でお餅を焼きますが、結局お餅は膨らまず、奥さんは怒って捨てました。
お餅は高い山に籠り、もっともっと硬くなるために一人で修行を始めます。ある日、坐禅を組んでいると神様が現れ、「最後まで修行を続けられたらお前を『おもちのかみさま』にしてやろう」と言います。おもちのかみさまという言葉に、堅いお餅の心がぴくりと動きます。
次の日の夜、また神様が現れ、「このしちりんのうえであさまでふくれずにいられたら、おまえはおもちのかみさまじゃ」と言います。七輪の上に乗ったまま長い夜が明け、朝が来ました。(いよいよ、わたしがかみさまに…)お餅がそう思った時、神様が「やっぱり、やーめた」「かみさまにするのは、やめにした」とお餅に言いました。「な、なんだって〜〜!!!」とお餅が怒りで膨れ…その瞬間、神様はパクリとお餅を食べてしまいます。
「あーうまかった。おもちはおいしくふくらんでこそおもちじゃよ」
おすすめポイント
表紙のインパクトの強さに思わず手を伸ばしてしまう、個性派絵本です。
昔の中国が舞台のお話で、主人公はお餅です。なんとも不気味な出立ちのお餅で、登場した瞬間に笑ってしまいます。旅人やお屋敷の奥さんに焼かれている時のお餅の表情や、滝に打たれたり坐禅を組んで大真面目に修行をするお餅の姿が滑稽で、ページをめくる度に笑えます。
お餅の神様という言葉に心が揺らぎ、まんまと神様の作戦にはまってしまうお餅の表情の変化も面白く、また、ラストのテンポの良さも秀逸です。
面白い本が読みたい!と思った時にイチオシの、ユニークでとんちの効いた絵本です。
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