ひさかたチャイルドHPより表紙画像をお借りしました。
おなかのなかにおにがいる
作 小沢孝子
絵 西村達馬
発行 1982年12月
出版 ひさかたチャイルド
ページ数 40P
おすすめの年代 4歳〜小学校低学年
あらすじ
今日は豆まきの日。みんなで鬼のお面を作っているところです。
あっちゃんは鬼を空色に塗っています。実は、あっちゃんのお腹の中に鬼がいて、その鬼が空色だからなんです。あっちゃんのお腹にいる鬼はいつも寝そべっている、めんどくさがりやの鬼なのです。あっちゃんは「あーあ、いやになっちゃった」と言って、お面作りをやめて寝っ転がりました。でも、それはあっちゃんのせいではなくて、お腹の鬼が悪いんです。
ふうちゃんはお面を黄色に塗っています。ふうちゃんのお腹には黄色い鬼が住んでいるんです。ふうちゃんの黄色い鬼はまんまるに太った食いしん坊鬼です。ふうちゃんがもう食べたくないって思っても、お腹の鬼が「チョコレート食べたい」「おせんべもっとおくれ」と言うのです。
なつこちゃんはおとなしくて友達にも親切で、先生の言うこともよく聞く、とてもいいこですが…なつこちゃんのお腹にもやっぱり鬼が住んでいます。桃色の、なんだか弱そうな、泣き虫みたいな鬼です。
誰かがなつこちゃんの桃色のお面をまっかかに塗ってしまいました。それは、へそ曲がりで暴れん坊のごろちゃんでした。なつこちゃんは泣き出しました。
「おにはまっかっかがいいんだぞ。」ごろちゃんはみんなのお面をまっかっかに塗ってしまいました。ごろちゃんのお腹には真っ赤なへそ曲がりの鬼が住んでいます。
そこへ先生が良いにおいのする煎りたての豆を持ってきました。「できたおめんはかべにかけましょうね。」と先生が言いましたが、ごろちゃんはお面を自分で被ります。みんなは壁にかけた鬼に向かって元気よく豆をまきました。すると、お腹の中にいた鬼がみんな慌てて飛び出してきました。
ところが、ごろちゃんは「おには〜うち。おには〜うち。」と言いながら豆を食べます。すると、行くところがなくて困っていた鬼たちは、大喜びでごろちゃんのお腹に飛び込んでいきました。
ごろちゃんのお腹は鬼たちで満員。でも、鬼たちは他に行くところがないんです。誰か鬼をもらってくれる人はいませんか。もしいたら、大至急ごろちゃんのところへ取りに行ってください。
おすすめポイント
節分のお話ですが、本書では外から鬼がやってくるのではなく、みんなのお腹の中に鬼がいます。悪いことをしてしまうのは、お腹の中に鬼がいるからなのです。子どもたちにとっては少しドキッとする設定ですが、とても良い子のなつこちゃんのお腹にも鬼がいるという描写に子どもたちはホッとするかもしれません。
めでたしめでたしではなく、「鬼をもらってくれる人はいませんか」という呼び掛けで終わるラストが個性的で、ごろちゃんはどうなるのかな?もらってくれる人なんているのかな?と読後に様々な想像を繰り広げる余地が残されています。
このお話は読み終わった後、お子さんと会話をするのがお勧めです。この後どうなるかというお子さんの想像の内容を聞いたり、お子さん自身の中に鬼がいると思うかを尋ねたりすることで、お子さんの世界観や、自分をどのように捉えているかを知ることができるからです。
発行されてから年月が経っているため、文章やイラストがややレトロな印象を受けますが、最近の絵本にはない独特の味があり、子どもたちには新鮮に映るかもしれません。節分の時期にお薦めの、個性派絵本です。
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